落乱拾遺集
随時更新。基本的に下の記事ほど新しい はず。
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◇1巻でしんべヱの剛毛を梳かそうとしたきり丸の台詞
「わ、わたしのベアクロー…」
漫画「キン肉マン」(ゆでたまご先生/ジャンプ・コミックス)に登場するコンピュータ超人・ウォーズマンの武器が「鉄の爪ベアクロー」。この場面できり丸が手にはめているものと同じ形。
ウォーズマンの一人称は「わたし」で、初期は悪役でした。
◇1巻に登場「忍術学園のドラゴン」竜王丸の自称
「デビッド・ニブン」
David Niven:スコットランド出身。1910年3月11日生〜1983年7月29日。
本名はJames David Graham Niven。士官学校卒の元英国陸軍大佐で、「英国紳士」役をやらせれば随一。渋くて威厳のある俳優さん。
息子のデビッド・ニブンJr.も俳優ですが、お父さんに比べるとマイナーかも。
主な出演作
「いとしの殿方(My Man Godfrey)」(1957、米/監督:ヘンリー・コスター 共演:ジューン・アリスン、マーサ・ハイヤー)
「寝室物語(Bedroom Story)」(1964、米/監督:ラルフ・レヴィ 共演:マーロン・ブランド、シャーリー・ジョーンズ)
「ナバロンの要塞(The Guns of Navarone)」(1961、米/監督:J・リー・トンプソン 共演:グレゴリー・ペック、アンソニー・クイン)
「007/カジノ・ロワイヤル(Casino Royale)」(1967、英/監督:ジョン・ヒューストン 共演:ピーター・セラーズ、デボラ・カー)
「ピンク・パンサー5/クルーゾーは二度死ぬ(Curse of The Pink Panther)」(1983、米/監督:ブレイク・エドワーズ 共演:ロバート・ワグナー)
◇29巻登場 ドクタマのくの一
「黒戸カゲ」先生
江戸川乱歩の小説「黒蜥蜴」(1934年発表)の主人公。
自らの犯す猟奇的犯罪によって理想の美を追求する危険な美女。女盗賊として暗黒街に名高い。「美しいものならそれが人間でも、男でも女でも、なんでも手に入れたい」という欲望を持ち、美しい宝石、美しい令嬢を狙って名探偵・明智小五郎と対決する。人間を剥製にし私設美術館に飾る趣味を持つ。
名の由来は左腕に彫られたトカゲの刺青。
黒戸先生とはえらい違います。
◇29巻P107 ふぶ鬼が歌った
「わがみっつー♪」の歌。
'60年代にテレビ放映されたミツワ石鹸株式会社のCMソング。当時は珍しい企業イメージCMであり、人形アニメーションCMのさきがけにもなった。
会社は家庭用石鹸部門をP&Gに売却後、倒産。
ちなみにフルコーラスはこのような。
「ミツワ石鹸」(作詞・作曲/三木鶏郎、歌/スリーバブルス)
ワ ワ ワ 輪が三つ
ワ ワ ワ 輪が三つ
ミツワ ミツワ ミツワ石鹸
◇33巻P71 伊作が「分かっちゃうんだ…」と嘆いた
歯磨き粉の名前
・アクアフレッシュ(製造:グラクソ・スミスクライン社 発売:アース製薬)
・オーラ2(発売:サンスター)
・クリスタ(発売:ライオン) または クリニカ(発売:ライオン)
・ホワイト&ホワイト(W&W)(発売:ライオン)
・モンダミン(販売:アース製薬)
・アパガード(発売:サンギ)
※さきちゃん!みきひさくん!芸能人は歯が命!のCMが一世を風靡したのも今は昔。
・エチケットライオン(発売:ライオン)
※「お口のニオイにエチケットライオン」のキャッチフレーズがあります。
・デンタルガム/歯磨き粉の商品名と言うより、その名の通り「ガム」(初期虫歯を再石灰化する働きがある『ポスカム(グリコ)』等)をさすような…。「GUM」はサンスターから発売。
これを調べるために薬局めぐりをした自分はどう見ても暇人です本当にありがとうございました。
◇32巻P164などに登場
「日に〜やけた 頬よ〜せて♪」
1963年にキングレコードから発売された「恋のバカンス」(作詞/岩谷時子、作曲/宮川泰、歌/ザ・ピーナッツ)。
ザ・ピーナッツは59年にデビューした伊藤エミ・ユミの双子姉妹ユニット。モスラ〜や♪の歌で有名ですが、実は他にも多数のヒット曲がある実力者。
♪ 陽にやけたほほよせて ささやいた約束は ため息が出ちゃう ああ恋のよろこびに
70年代初め、ソ連(当時)でも「青い青い海のもとで」というタイトルでなぜか大流行。
モーニング娘。の辻希美・加護亜依のユニット「W(ダブルユー)」が2004年にカバー。
明石家さんま・鈴木杏樹主演の同名ドラマもあり(1997年。Mr.childrenの「everything〜it's you〜」が主題歌)。この歌とは関係ありません。たぶん。
どちらかと言えば非お子様向けな歌詞です。
◇6巻P17
隠形の呪文「オン・アニチ・マリシエイ・ソワカ」
密教における戦いの女神・麻利支天(まりしてん)の真言。麻利支天は陽炎の象徴で、この真言を唱えると悪鬼から身を隠す事ができるとされています。
ちなみにここで言う真言とは、空海を開祖とする「真言宗」ではなく「仏菩薩などの偽りのない真実の言葉」と言う意味。
掘り下げると面白そうなテーマですね。
◇20巻P25などに登場
「なにもいっわないでちょーだい♪」
1965年のヒット曲「さよならはダンスの後に」(作詞/横井弘、作曲/小川寛興、歌/倍賞千恵子)。第7回日本レコード大賞受賞曲。
倍賞千恵子さんは映画「ハウルの動く城」のソフィー役でもおなじみ。実妹で女優の倍賞美津子さんはアントニオ猪木の元奥様です。
♪ 何も言わないでちょうだい 黙ってただ踊りましょ だってさよならは辛い ダンスの後にしてね
物悲しいメロディーが哀愁を誘う別れの歌です。
作中でこのフレーズを使っているのは大黄奈栗野木下穴太と風鬼。ドクタケ城で流行ってるんでしょうか…。
◇36巻P148 乱太郎に背後からどつかれた辺野にきり丸が一言
「油断大敵アリの穴」
「千丈の堤も蟻の一穴(せんじょうのつつみもありのいっけつ)」
アリの開けた小さな穴から徐々に水が漏れ、その結果、千丈もある巨大な堤防を決壊させることもある。転じて、小事と軽んじて放置していると思わぬ危険をもたらす、という教訓。
「千丈の堤も蟻穴より崩る」「千丈の堤も螻蟻(ろうぎ=オケラとアリ)の一穴より崩る」とも言います。
※ サッカー漫画「Jドリーム」(塀内夏子先生/少年マガジンコミックス)の中で、強敵への対抗策がまとまって守備陣のリーダーが「千丈の堤も蟻の一穴ってやつだな!」と檄を飛ばし、チームメイトがそれに応えて「オオウッ!」と気勢を上げながら内心「?????」となっているシーンがあります。
この場面の登場人物は少なくとも全員17歳以上。小学生新聞を読む年代で「油断大敵アリの穴」の意味が分かる人がいるのだろうか。あんまり馴染みのある諺じゃないと思うんだけど。
◇39巻P145、47巻P80などに登場
「田楽豆腐」の串
串に刺した茄子や豆腐を炭火で炙り、調味味噌をたっぷり乗せて食べる田楽。
この串の形は地域によって違いがあり、関東では「平たい竹串を一本」、関西では「先の割れた細い竹串を二本」刺すのがスタンダードで、中間点の東海地方では「根元が一本で先が二股に分かれた音叉型」の串が使われていたとか(出典:「大江戸美味草紙」著/杉浦日向子)。
グーグルで画像検索をすると、現代でもその傾向はありそうです。
故に「二本差し(=本差と脇差の二刀)が怖くて田楽が食えるか!」と言う武士に対する啖呵は、江戸っ子ではなく東海以西の言い回しなのだそうで。
コミックスで確認できる、土寿烏・万寿烏や兵助が作っていた田楽豆腐は東海地方タイプの串。相模が拠点の風魔忍者を暗殺して名を上げていたくらいだからドスマスは関東で活動していた時期があるはずで、そこから忍術学園のある関西へ流れて来る途中に東海周辺を通って田楽の作り方を覚えた のかもしれません。
また兵助の姓「久々知」は尼崎市の地名ですが、東海地方西部の三重県伊賀市は田楽豆腐が名物だそうなので、もしかしたら伊賀出身で忍者の家系だったりするのかも。
※出典部分以外はもちろん妄想です。
◇団蔵の元ネタになった人物は
二人いる?
一年は組の会計委員・団蔵のフルネームは「加藤団蔵」、父ちゃんが「加藤飛蔵」なのは周知の通り。室町時代に実在したと思われる常陸国出身の忍者・飛び加藤こと「加藤段蔵」が名前の由来であることも示唆されています。
逸話に残る飛び加藤は忍者とも幻術使いとも盗賊ともつかない不気味な人物で、「大らかで男らしいしっかり者」(忍たまの友/天之巻より)の団蔵とはかなり異なる、アンチヒーローでダーティーなイメージ。最期は武田信玄の指示で銃殺されたとも、磔刑に処されたとも言われています。この辺りに興味がある方は司馬遼太郎の『飛び加藤』(新潮文庫『果心居士の幻術』所収)がおすすめ。
それはさておき。
名前は怪しの忍者から取ったとして、それでは何故に団蔵んちは「近江」の「馬借」なのか?
以下は全くの推測ですが。
団蔵と同じ「加藤」姓の戦国武将に加藤嘉明(かとうよしあき/よしあきら、1563年〜1631年)がいます。同時代かつ同年代に何かとハデな加藤清正がいるので「ジミな方の加藤」とか言われたりしてますが、清正と同じく秀吉子飼いで、決して高くはない身分から武勇と知略で会津藩40万石の藩主まで上り詰めた凄い人です。暴れ虎を前に全く気に留めず居眠りして「……騒がしいけど、なんかあった?」「ととととと虎が! 虎が!」「あっそう……グースカピーヒョロ」なんて逸話のある豪胆な人でもあり、こっちのほうが性格的に団蔵っぽい。
この嘉明さんが幼い頃、一揆に関わったかどで主家を離れて浪人していた父親が亡くなってしまい、生活のために近江国長浜で馬喰=馬の商人の下男をしていたという説があります。
そのため非常に馬術が巧みで、クセの強い馬を見事に乗りこなしたのを評価されて秀吉の小姓に推挙されたと言われています。また馬の選定眼が鋭く、「ちょっと俺の馬見立ててくれよ」と頼まれることもあったそう。
馬喰と馬借の違いはあるものの、加藤つながりで嘉明さんの経歴を団蔵に取り入れたのかなーと思いました。作文。
※嘉明さん関連の話は出典不詳(名将言行録?)で真偽不明なので、「逸話」としてお読み下さい。
◇15巻P221 賽銭箱に銭を入れて『ぷっつん』したきり丸のぼやき(?)
「あらまっちゃんめだまのちゅうがえりー」
驚いた時に発する言葉の「あらまあ」と、明治〜大正時代の映画俳優・尾上松之助(1875年〜1926年)の愛称「目玉の松ちゃん」が結びついた、一種の言葉遊び。「びっくりして松ちゃんみたいに目を(剥いたから/剥いたら)、目玉が飛び出して(宙返りしちゃったよ/宙返りしちゃうよ)」ってことでしょうか。このシーンのきり丸は驚いてると言うより放心してますけどね。
尾上松之助は日本最初の映画スターとも言われる名俳優で、目をくわっと見開いて見得を切る演技が印象的なことからこの愛称がついたそうです。
しかし検索して出て来る
ご本人の画像を見るとそれほど眼力ビシバシでもない感じ。
白黒のコントラストがきっつい昔のフィルム映画だと、見開いた目の瞳と白目の差が白塗り化粧やアイラインで強調されて、殊に「大きな目」として記憶されたのかなーと思います。新しい大衆娯楽の映画をみんなが熱心に見ていた時代ですし、ヒーローが格好良くキメる場面は印象に残りやすい最大の見せ場ですし。
別バージョンで「あらまっちゃんでべその宙返りー」と言う文句もありましたが、尾上松之助が出ベソかどうかは知り様もありません。
ついでにこの時しんべヱが言った「ぷっつん」は1986年の流行語大賞。15巻相当部分が朝小に掲載された1994年にはすでに死語ではないかしら。
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